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飛鳥京香「日本人の時代ージャップスデイズ」

飛鳥京香「日本人の時代ージャップスデイズ」

ジャップス=デイズ日本人の日々■第5回

ジャップス=デイズ日本人の日々■第5回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
第5回

 ケン。アサガは深い眠りの中にいた。
 悪夢だった。
 日本全国にミサイルが雨あられと降りそそぎ、炎と化しているの
だ。
 父や母、妹ルミの姿がその紅蓮の炎の中に消えていく。彼らがケ
ンの名前を呼んでいる。
 思わず、叫び声をあげ、目がさめた。
 不思議な風景が目の前に入ってきた。窓を通して地球が見えてい
るのだ。

 ベッドの側に男が立っていた。
 「気がついたかね。ケン・アサガ」
 「ここはどこだ。警察は」
 「心配しなくてもいい。警察の件は我々が処置した。君が驚くのも
無理はない。ここは宇宙空間だ。宇宙ステーション=ゼウスだ」

 「警官はいないのか。それに私がなぜここに」
 「言っただろう。君を保護したのだ。我々の役に立ってもらうため
にね」
 「君たちの役に立つだと、一体、何なのだ」
 「ケン=アサガ、我々は君に一つのプロポーザルをおこなおう。こ
れは君にとって、悪くはない提案だ。したがわない法はないと思う」
 「それは私が決める事だ。君達は一体、何者なんだ」
 「情報ネットワークの者だ。ヘブンズとも呼ばれているがね。私は
ブキャナンと言う」
「情報マフィアか」
「そう呼ぶものもいる。この種の会社組織に対する人のとらえ方と
いうものは種々なのだ。いいかね、ケン、君は日本人としてはかな
り英語がしゃべれる。我々のエージェントになって我々のために働
らかないか」

 ケンは、提案の奇妙さに驚いた。
「一体、どんな仕事をしろというんだ」
「日本人を抹殺するための手助けさ」
 ケンは自らの耳を疑う。
 「冗談を言っているのか、君らは」
 「冗談かどうか」
 

ブキャナンは時計を見た。そして片わらの二人の情報サイボーグ
に言った。
 「おい、ケンにテレビを見せてやれ。ちょうどいい時間だ」
 一人のサイボーグがTVのスイッチをONする。

 アメリカン・ネットワーク=ニュースが写る。
ケンがいつも見なれているコメンテーターが恐るべきニュースをつげていた。


『臨時ニュースを申しあげます。本日午前6時、アメリカ政府のス
ポークスマンは重大な発表を行ないました。
 アメリカ合衆国を始め、ヨーロッパ各国、ロシアを含むユーラシアアジア
圏その他54カ国によって「JVO条約」が発効されました。
 「JVO」とは「日本消滅組織」であり、長年にわたり、秘密裏に条約会議がもたれていた模様です。 詳細は続報が人いり次第、レポートいたします……』
(続く)
1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/


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